眼内レンズGalaxyとは？
RayOne Galaxy（レイワンギャラクシー）は、白内障手術または老眼手術用の多焦点眼内レンズです（乱視を矯正できるトーリックレンズもあります）。
このレンズは、イギリスのRAYNER INTRAOCULAR LENSES社とブラジルのJoão Marcelo Lyra医学博士が共同で作成し、人工知能（AI） を用いて開発した、全世界で初めてのスパイラル（螺旋構造：らせんこうぞう）多焦点眼内レンズ（IOL）になります。
RayOne Galaxyは2024年7月にヨーロッパCEマークを取得し、ヨーロッパで販売しています。日本では自費診療での取り扱いになります。
眼内レンズGalaxyの特長
RayOne Galaxyは、光学部（レンズの役割をする部分）が螺旋構造になっています（※写真はわかりやすくするために色をつけてありますが、実際は透明）。これによって、次のような特長を有しています。
- 3焦点レンズと同様、遠方から近方まで見える
- 単焦点レンズと同じくらい、暗所での異常光視症（ハロー・グレア、スターバーストなど）が少ない
- ライトロスがほとんどない
① 遠くから近くまで良好な視力が期待できる
② 異常光視症が少ない
RayOne Galaxyは単焦点レンズと同じぐらい、夜間にライトがまぶしく見えたり、光がにじんで見えるといった違和感（ハロー・グレア、スターバースト）を抑えることができるレンズです。
ハロー・グレア比較
Galaxy
PanOptix
③ ライトロスがほとんどない
一般的な多焦点レンズでは、遠くや近くを見るために光を振り分ける際、一部の光が無駄になってしまうことがあります（ライトロス）。そのため、見え方がややぼやける場合もがあります。RayOne Galaxyでは光の無駄がほとんどない設計のため、はっきりとした見え方が得られることが期待できます。
治療について
眼内レンズの挿入は、通常の白内障手術と同様です。
- 点眼による準備
手術の前に、瞳孔を広げるための散瞳薬と、痛みを感じにくくする麻酔薬を点眼します。 - 切開
角膜、または白目の部分（強角膜）を約2.5mm切開して、眼の中に小さな入口を作ります。 - 濁った水晶体の取り出し
水晶体を包む膜（嚢）の前側中央を円形に切開し、そこから濁ってしまった水晶体を丁寧に取り除きます。 - 眼内レンズの挿入
ヒアルロン酸を主成分とする粘弾性物質を眼内に注入し、その中にRayOne Galaxyレンズを広げながら、水晶体嚢の中に慎重に挿入します。 - 仕上げと確認
レンズ挿入後、眼内に残った粘弾性物質をきれいに取り除きます。最後に、切開部分から液が漏れていないかを確認し、手術を終了します。
眼内レンズGalaxyが適用できない方
以下の方は、レンズが挿入できないことがあります。その場合には、他の眼内レンズの挿入、中止、他の施設に紹介となることがあります。
- チン小帯脆弱、後嚢破損
- 不正乱視
- 水晶体偏位
- 緑内障、ぶどう膜炎
- 角膜内皮変性症
- 網膜疾患、視神経疾患
- 小眼球
- 小児
- 細菌感染症（疑いを含む）
- 駆逐性出血、虹彩損傷、硝子体脱出などのリスクがある
- その他、担当医師が不適当と判断した場合
術後の副作用について
白内障手術・眼内レンズ挿入術後に発生するもの
目に痛み・しみる感じ・異物感
手術後20〜30分ほどで麻酔が切れてくると、目に軽い痛みや異物感、しみるような感覚が出ることがあります。
これらの症状は通常、数日以内に自然と落ち着いていきます。痛みを和らげるお薬を処方いたしますので、医師の指示に従ってお使いください。
視界がぼやける・見えにくい（矯正誤差）
眼内レンズだけでは、近視・遠視・乱視を完全に取り除くことは難しく、多少の屈折誤差が残ることがあります。
手術から3か月以上経過して目の状態が安定しても見えづらさを感じる場合は、眼鏡やレーシック、あるいは眼内レンズの交換などの矯正手段が必要になることがあります。
後発白内障
手術後、数か月～数年経つと、眼内レンズを支えている「後嚢（こうのう）」という膜が濁ってきて、視界がかすんだり、視力が低下したりすることがあります。これを「後発白内障」と呼びます。
レーザー治療により濁りを取り除くことで、視力は回復します。一度この処置を受ければ、再発することはありません。
飛蚊症・色の見え方の変化
白内障手術後、今まで白内障の濁りによって見えにくかった「飛蚊症」がはっきりと見えるようになり、飛蚊症が増えたように感じることがあります。ただし、眼底検査で異常がなければ心配はありません。また、白内障の濁りによって気づかないうちに黄ばんでいた視界が、手術によってクリアになることで、しばらくの間は視界が青白く感じることがあります。
多くの方は数か月でこれらの違和感が気にならなくなりますが、片目だけ手術を受けた場合には、手術をしていない目との色の見え方に差を感じることがあります。この色の左右差も時間とともに自然に自然と馴染んでいきます。
白内障手術・眼内レンズ挿入術後に稀に発生するもの
感染症
手術後、傷口が完全に治るまでの間に、汚れた手で目を触るなどして細菌が入り、感染症を引き起こす可能性があります。予防のために、処方された抗生物質の点眼薬などを医師の指示どおりにご使用ください。万が一、感染が疑われる場合で、当院での対応が難しいと判断された場合には、専門の医療機関をご紹介いたします。
眼圧の上昇
手術後、一時的に眼圧が高くなることがあります。定期検査で眼圧の上昇が確認された場合には、点眼薬などのお薬を追加・変更したり、中止したりして調整を行います。必要に応じて治療を進めてまいりますので、ご安心ください。
眼内レンズがずれる
手術後、眼内レンズの位置がわずかにずれることがありますが、多くの場合、見え方に影響はありません。ただし、視力に影響が出るほどのズレが生じた場合は、位置を調整するための再手術を行うことがあります。
水晶体嚢が破れる
手術中にごく稀ではありますが、水晶体を包む膜（嚢）が破れることがあります。この場合、手術時間が延びたり、再手術が必要になる場合があります。また、状態に応じて異なる種類の眼内レンズを使用したり、眼内レンズを挿入しないこともあります。
その他の合併症
極めて稀ではありますが、角膜内皮細胞の減少、ぶどう膜炎、眼内炎、中心性黄斑浮腫、眼内レンズの変形などの合併症が起こる可能性があります。これらの症状が生じた場合には、状態に応じた専門的な治療が必要です。当院での治療が難しい場合には、適切な専門医をご紹介いたします。
多焦点レンズ特有で発生するもの
見え方に慣れない
手術後、「すっきり見えない」「見え方に違和感がある」「視線を遠くから近く、または近くから遠くに移動させたときに一時的にぼやける」といった症状が出ることがあります。これらは多くの場合、目が新しいレンズの見え方に慣れていないためです。
自然な見え方になるまでに通常3～6か月ほどかかります。それでも見え方にどうしても慣れない場合には、単焦点レンズへの交換を検討することがあります。
暗い場所での視力低下・光のにじみ
薄暗い環境では、明るい場所に比べて視力が低下したように感じることがあります。作業に支障がある場合は、手元をスタンドライトなどで明るくしてご対応ください。
また、夜間や暗所では、街灯や車のヘッドライトなどがまぶしく感じたり、光がにじんで見えることがあります。これが日常生活に影響を与えるような場合には、単焦点レンズへの変更を検討することもあります。
不十分な多焦点効果
RayOne Galaxyは遠く・中間・近くと、日常生活で必要な視力を得られるよう設計されていますが、個人差により、期待していたほどの見え方が得られない場合もあります。そのような場合には、必要に応じて眼鏡を併用していただくことがあります。
